FCAは2021年7⽉13⽇、⾳楽作家が直⾯する著作権に関する3つの課題 1. 私的録⾳録画補償⾦制度、2. 楽譜の無断コピー・無断配信、3. ⾳楽教室での演奏利⽤を取り上げ、音楽作家への正当な対価を求める意⾒表明を⾏いました。
楽譜の無断コピー・無断配信について小六禮次郎理事長にお話を伺います。
― 楽譜の無断コピーへのFCAの取り組みについて教えてください。
FCAは2004年9⽉から楽譜コピー問題協議会 −略称でCARS(Consultative Assembly on Reprographic problems of Sheet music)と言いますが− その⼀員として、楽譜の違法複製を防⽌して適正利⽤を促すという活動に取り組んでいます。
― CARSについて伺います。いつから活動しているのでしょう?
2004年9月に、FCA、日本楽譜出版協会、JASRACの3者が集まって活動を始めました。
― CARSの活動の主な対象は?
小学校・中学校・高校の先生方や、吹奏楽部・合唱部等の部活動の生徒さんを主な対象に、楽譜をコピーすることの問題を啓発しています。
― 学校が啓発活動の中心になる理由は?
これがなかなか難しい問題なんですが、「授業のために楽譜をコピーすることは権利者の承諾なく無償で行うことができる。ただし権利者の利益を不当に害しない範囲で」と法律で定められています。ですが「権利者の利益を不当に害さない範囲で」という但し書きが抜け落ちしまって、小学校・中学校・高校では、教育目的であればどれだけコピーしても構わない、と誤解されることが結構多いんです。部活動では人数分の楽譜を購入する代わりに、コピーで済ませる例が後を絶ちません。無償無許諾で楽譜を複製することが許されている学校だからこそ、もっと自制的であって欲しいと思うんです。権利者の利益を不当に害することがないよう、理解していただきたいのです。
― 啓発方法について教えてください。
楽譜ユーザをはじめ、多くの人に無断コピーの問題を知ってもらうためCARSのホームページにQ&Aを掲載したり、パンフレットやチラシを作って学校や図書館などに配布しています。
― 啓発活動の効果は?
合唱や吹奏楽のコンクールの主催者の方々に、参加者が無断で楽譜をコピーしないよう協力をお願いしてきました。現在では、審査員用にコピー楽譜を提出する際は、権利者が許諾していることの証明がなければ参加できない、という対応が一般的になっています。
― 無断コピーはなくなったのでしょうか?
残念なことに楽譜の無断コピーはなかなかなくなりません。それどころか、デジタル化が進んだ結果、楽譜のデジタル・データをコピーしてメールで送信したり、サーバにアップロードして複数の人が見られるようにしたりすることが日常的に行われるようになっています。
― 今後の対応について教えてください。
デジタル化が大変進んできているので、権利者の利益を侵害する複製や送信が手軽にかつ大規模にできてしまう。しかも重大なこととして、無自覚のまま行われているのが現実です。ですので私たち音楽作家は、楽譜コピー問題についてもなお一層、対価の必要性を社会に訴えなければなりません。