去る6月10日にFCAの2021年度定時社員総会が開催されました。今回の総会では役員の選任がおこなわれて、FCAの新しい体制が発足しました。そこでインタビューの第一弾として小六理事長にご登場いただき、FCAのこれまでとこれからを伺いました。
2021年度のFCAの事業
― 2021年度のFCAの事業について伺います。2021年度のテーマは何でしょう?
FCAはこの4月22日に創立35周年を迎えまして、来るべき時代に向けて新しい活動に取り組んでいこうと思っております。
― 2021年度の事業の基本方針を教えてください。
基本方針としましては、他の権利者団体と連携して音楽創作者の権利と利益の保護に貢献していくということ。それが変わらない基本方針ですね。
― 2021年度の新事業について教えてください。
新しいホームページを作りまして、先ほど申し上げたような方針を皆さんにお知らせしていきます。それから私がこうしてインタビューを受けておりますが、いろんな作家の方々にインタビューをして、音楽作家というのは皆、どんなことを考えて仕事をしているんだろうとか、いま起きている問題は一体どんなもんなんだろうか、ということを知っていただく。それから目玉とも言える事業が、アンケートなんですよ。12団体で約4千人弱の作家がおりますが、その方々に自分たちの問題はどういうところにあるのか、どういう考え方で音楽を作っているのか、そういう質問を投げかけまして、その答えをいただいて我々の事業に反映させようと。そうした事業をやろうと考えております。
― いまお話いただいたアンケートなんですが、その調査結果は公開されるんでしょうか?
もちろん、先ほど申し上げましたホームページで詳細に亘って公開するつもりです。いろんな話が聞けると思いますよ。
ご自身のFCAとの関り
― FCAの役員になられたのはいつですか?
1994年ですね。
― 理事長になられたのは?
2000年です。ですから、もう早いもので20年以上経っているわけですね。
― 在任期間はどれくらいの長さになりますか?
一般社団法人前が2期6年、一般社団法人後が3期6年目になります。トータルで12年ぐらいですね。
― FCAに関わることになったきっかけを教えてください。
最初に「FCAというものができるので小六くん入ってくれないか」と言われたのが、当時のJASRACの理事長の芥川也寸志先生からでした。私が当時35~36歳ぐらいでしたから、たぶん芥川先生も若手をそういう新しくできる組織の中に入れたいとお思いになったんだと思います。そういうふうに私が推薦された理由としては、ちょっとそれより前になるんですが、放送(使用料に関する)問題でいろんなことがあり、私がJASRACにいろんな意見を申し上げたことがあって、そういうことを言える人間がちゃんといるというふうに思っていただけたんじゃないかと思います。
― 小六理事長は著作権契約に関する音楽出版者との協議に関わられたと伺っています。協議を行うに至った当時の背景をお聞かせください。
その当時、もちろん著作権契約書というものはあって、何か仕事をすると出版者から送られてくるわけです。しかし、作家のほうもきちんと読んでいなかったり、自分の契約だという意識も少し薄かったりして、内容をちゃんと把握できていなかったりしたんです。出版者の方々は長年の慣習と言いますか、契約というのはこういうものだろうということで、著作権(の譲渡)期間とか、そういうことに関しては出版者の考えるとおりの契約書になっていたんですね。それで、我々の問題と出版者の問題を両方で話し合って改善していこうと、そういう考えから始まったわけです。
― 実際に出版社との協議は順調だったのでしょうか?
これが大変だったんですよ(笑)。どうして大変かと言いますと、我々は出版者とは日常的に仕事をしているわけです。出版者からオーダーがあって曲を書いたり歌詞を書いたりしているわけですからね。その親しい中で、お金にまつわるシビアな話をしなければならない。そういう部分が一番大変でしたね。
― 理事就任前に、FCAをどの程度ご存知だったのでしょうか?
それは設立当時から分かっていました。先ほども申しましたが、芥川元理事長は出版者との関係を議題に上げるだけではなく、作家同士の話し合いもFCAという場所でできるんじゃないかとおっしゃっていました。その当時、編曲の問題とか色々出ておりましたので、そういう問題もFCAの中で、作家同士でいろんな話をしようと。そういう場だとおっしゃっていましたので。
― 役員としてFCAの活動に長く関わられていますが、そういう立場になってFCAについてどう思われますか?
参加当時は若手でしたから、基本的にいろんな仕事をやらせていただきまして、やはり時代が変わっていくというのを見ましたね。昭和から平成になっていくわけですね。私の若い頃はやはり演歌・歌謡曲というものが主体でしたし、J-POPが出るか出ないかという時期ですから、まだ昔の音楽業界の雰囲気が残っていました。それが平成の時代になって、1990年ぐらいからどんどん変わっていった、コンピュータが出てきたりして、そういうことがいっぱいありましたので、それに作家がどうやったら追いついていけるんだろうか、というようなことを見てきました。そしてご存知のようにFCAはいま、高齢化が進んでいます。なぜ高齢化が進んでいるかというと、加入している会員団体が昔のままの形態の団体が多いんですね。新しく日本音楽作家協会(MCA)という60名の方々が会員になっている団体に入っていただきまして、若返りを果たしましたが、どんどん変わらないといけないということでしょうね。
FCA理事長として
― 今年の役員改選では新しい顔ぶれとなりました。
若い方、というと語弊があるかもしれませんが(笑)、10名を越える新しい方々に役員に就任していただきまして、ベテラン役員と一緒に、新しいことと昔からのいろんな知恵や発想を交えて、活動を活性化していきたいと思います。ご期待ください。
― この度、理事長に再任されたわけですが、豊富をお聞かせください。
やることがたくさんあります。コロナの問題もありますしね。今年度からこのインタビューも企画の中に入っているわけですが、新しい活動を目指そうと思っています。原点に返る、と会長はおっしゃっていましたが、本当に全くそうだと思います。35年を節目に新しい事業をやって、作家全体の問題をあぶり出して、問題点というのはどこにあるんだろう、と考える。常に世の中というのは問題が起きてくるわけで、それも時代が進むにつれて新しいいろんなことが起きてくることは間違いない。それに対処できるような体制にならないといけないんです。ここが一番大事だと思います。一年目からいろんなたくさんのことができるとは思いませんが、まず新しい時代の扉を開けて第一歩を踏み出し、若い世代にそういうようなことを考えているぞ、ということをまず見てもらって、事業を進めていく、というふうに思っております。
― 最後にこれを見てくださっている音楽作家に向けて一言、お願いいたします。
何度も申し上げますが、FCAというのは作家の団体が集まっている会なんです。つまり日本全国の、音楽を職業としている方々が集まっている団体、その団体たちが集まっている協議会ということになります。今回、若い方々の団体にも入っていただきましたので、100%とはいきませんが、多くの作家の方々がここに集結していることは間違いありません。我々が日本の音楽を背負って立っているぞ、という気持ちでこれから頑張っていきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。