会長 石原信一
このたび会長を重任いたしました作詩家の石原信一です。さて、昨年11月にフリーランス新法が施行されました。この法律はフリーランスが安心して働ける環境を整備するための法律です。フリーランスと取引する事業者には取引条件の事前の明示や報酬の支払時期の遵守などを義務付けています。フリーランス新法は音楽制作を発注するレコード会社や放送局、映画会社、音楽出版社と、その仕事を請け負うフリーランスの音楽作家にも及ぶものです。私自身もフリーランスの作詩家として50年以上、音楽制作に関わってきました。音楽制作の現場では製作者から発注の条件が事前に書面で明示されることは未だ稀で、仕事の発注と受注は口頭で済まされてしまうことが永年の慣行となっています。発注の条件が予め示されなかったり、形としてあとに残らない方法でしか示されなかったりすることが不当な契約の解除や報酬の減額といった取り扱いの横行に繋がります。FCAは、音楽制作の取引慣習をフリーランス新法に即したビジネスルールに再構築する必要があると考えます。そのためには音楽制作を発注する事業者の意識を変えるだけでなく、その仕事を請け負う我々フリーランスの音楽作家の意識も変わらなければなりません。不透明で不健全な取引慣行を受け入れてきた我々の意識が変わらなければ、法律が求める取引の姿を実現させることは決してできないでしょう。FCAは、フリーランス新法が求める取引の透明化向上と不当な扱いからの保護の実現を「一丁目一番地」の活動として取り組んでまいります。今後とも皆さまの変わらぬご理解、ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
理事長 渡辺俊幸
このたび理事長に就任いたしました作編曲家の渡辺俊幸です。さてFCAは、生成AIについて2023年に意見を表明し、2024年からは、AIの開発に関わる事業者と権利者による「AIと著作権に関する関係者ネットワーク」に参加して、関係者と議論を重ねてきました。AI技術を発展させるにあたって創作者の権利を阻害することなく調和を図ること、AIに関連して創作者の権利の保証に関する議論を早急に進めることをFCAは求めてきたわけです。そうしたなか、AIを開発して提供する事業者のうちには、権利者の了解が得られた著作物のみを学習データとして利用することをポリシーとして公表するところや、AIによる生成物であることを示す情報を電子透かしとして実装するところが現れています。また先のAI関係者ネットワークでは、著作物のAI利用についてライセンスのスキームが一部で構築されつつあることが報告されています。こうした創作者の権利との調和を図る議論や取り組みが現れてきたことは、大変に望ましいことだと考えます。今後、創作者への対価還元について議論が深化して具体化されることをFCAは期待し、これを実現させるための活動を続けていきます。またAIに限らず、FCAはこれからも音楽創作者の権利と利益の保護に貢献することを基本方針として活動していきます。今後とも皆さまの変わらぬご理解、ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。